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気温も上がって東京ベイに海蛍が群れ立って現れる季節になった。季節が繰り返し過ぎて、何年過ぎてもカレと眺めたその綺麗な光の浮かび上がって来る光景を忘れられないでいるんだ。風も心地よいそのベイに置かれた建物の中でひとりで休んでいるとき、ふとため息が漏れるのはどうしてだろうか?・・・って、思い出されても来る。あの切なくも甘ったるく過ごした日々が、もう戻って来ないモノだとは、思えないでいるんだ。カレと出逢ったのも不思議な因縁で結ばれているのかも知れない。ひとり孤独で大都会を彷徨い歩きながら生きていたオレにとって、カレは日射しにも負けないような強烈な光にまみれているかのようにも、見えていた。地方から出て来て、まだ大都会には不慣れなオレには、現実生活のひとつひとつが難しくて危険な階段を上り下りしているかのようにも思えていた。カレは、オフィス街で働いている都会っこで、到底、オレなんかには不向きな存在であろうとも考えていたけど、とあるスナックで声をかけてくれたときには、正直、驚いた。オレが、友達とカラオケで歌っているのを聴いていたのだろうか?かなり、そのときオレは、友達と飲み明かして酔っぱらっていたんだ。友達が一緒に次の店へ行こうと言うのを断って、そこでひとりでボーっとしていたら、カレはオレの横に近づいて来て、ひとりで飲んでいたみたいなんだ。カレが、オレに肘でオレの背中をつついて起こしてから、それから店のマスターに自分の歌いたい歌をかけてもらって歌い出した。とても、素敵な声とそのメロディーの旋律のもの悲しさに打たれて聞き惚れていたんだ。カレは、スーツにネクタイの姿でスマートなスタイルだ。オレは、とってもラフな格好をしている。似つきもしないふたりが出逢ったのは、こういう所なんだから、本当に偶然も偶然と言えばそうとしか言いようがないよ。・・・<オレ、地方から出て来て間がないんだ。よくこの大都会の事を知らないから、人に振り回されるみたいに生きているんだ。やっぱり、地方の出身は、それらしく過ごしていた方がいいのかなあ。誰もかれもスケジュールに沿って生活をしているみたいで、とってもついて行けない。だから、もうこの大都会から帰ろうかと思っていたんだ。ひとりぼっちで寂しいばっかりで、何も自分には楽しみも湧いて来ない。ただ、夢を見ていたときのビルディングが幾つも立っているだけで、オレを休ませてくれようとはしていないし、とっても辛い!><まだ、来たばっかりなんだろう。オレはずっと見ていたんだぜ。ココに入って来たときから、ジッとその姿を見ながら水割りを飲んでいたんだ。大都会を生きて行く生き方には、コツがあるのかも知れない。よかったら、オレと一緒にドライブでもしてみないか!夜の東京を突っ走るのもまた、気分転換になるよ。まだ、オレは独身なんだ。だから、何も遠慮をすることはないよ。><そんなことして貰ってもいいのかなあ。オレ、特にこれから何かをするって予定もないけど、貴方が明日、大変なんじゃあ?夜の大都会は、オレには闇の中の世界に見えて、とってもひとりでは帰れないから、困ったな。><大丈夫だよ。よかったら、オレのマンションに泊まって行けばいい。部屋はあるからさあ。だから、心配する事はないよ。そんなに自分を攻めたり、地方から来ている事を、後悔する必用もないよ。>・・・スナックを出て、カレの車で飛ばす東京の高速道はとっても眩かった。車のそれぞれのライトが、描くラインを見つめていると眼が眩む位だった。カレが、<東京ベイまで、行ってみよう。素敵な所があるんだ。海の中に展望台を兼ねた建物があるから、そこでゆっくり話をしようよ。>・・・と言って、オレを有無も言わさずに運び去って行ったあのとき、もうカレにオレは夢中になっていたのかも知れないとそう、思い起こしても見ているんだ。・・・<東京にずっと生まれてから住んでいるから、地方の良さを教えてくれないか?オレは何時も大勢の人集りの中で生きて来たけど、それなりに自分の生き方が機械じみているなあとも、感じてはいる。地方ならまた、ゆっくり出来るような所も、時間でこなしてしまわないといけないからさあ。でも、確かに、何でもあるなあ。ちょっと、車を飛ばせば、大体の所にいきつけるよ。物珍しいものでも手に入る。だから、カッコつけて生きて行くことに慣れてしまっているのかも知れないけど。>・・・それは夜でもなま暖かい季節の出来事だった。海の展望台から振り返るとビルの林が乱立している。あの乱立している所には、人集りが確かにあるんだ。そう思いながら闇に輝いている風景に見入っていると、<ほら、海の中を見て見ろよ。海蛍が、光を放って泳いでいる。何とも心が安まる生き物がこんな所でも生きているんだぜ。君もしっかりしろよ。だから、大丈夫、大都会でも生きて行けるからさあ。>・・・本当に、オレが出て来た田舎の何かの匂いを思わせるモノがそこには同時に存在をしていた。カレの誘いの儘にカレのマンションに泊まって過ごした一夜はとっても、オレの興味をそそった筈だ。カレが海外に派遣されることに決まってから、待っている期間の長さは何なのだろうか?もしかしてカレには、素敵な誰かが出来てしまっているんじゃあないだろうか?メールと電話はあるけど、時折、心細くなって来たりもして来るんだ。オレも東京に慣れてはいるけど、カレとの関係が火照るように結ばれているからなんだぜ。今日は、待ちきれなくなって、約束の展望台に来ている。フッと風の中にカレを感じ取りもしながら、海蛍の群をみていると、胸が熱くなって行くみたいなんだ。それは、オレには到底、叶わないかも知れない夢を見せてくれているからだ。待っていれば、もうじきカレが目の前で<やあ!>と行って、オレにしてくれること・・・それから、組み立てて行く未来を望んでも許されるだろうか?きっと、絶対にオレはその夢の中に溶け込んで行けるよね。
えいぞう
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